グローバル化 2012年06月28日

「共通言語としての数字」をグローバルの経営管理に根付かせるために経理財務のグローバル化対応。日本IBMが身をもって経験した苦労と知見を生かす

「財務データ集計に3週間かかり、その内容の問い合わせなどをしているとあっという間に1カ月もの時間がかかります。つまり1カ月以上遅れた情報をもとに経営陣は何かしらの判断をしなければなりません。これを私たちはテールライト・オペレーション(後ろを見た管理)と呼んでいます。
現在は、1年先までの大まかな予想と3カ月先までの精緻な予想値をリアルタイムで更新し、組織の各階層でアクションをとります。これによって、経営判断とそれに応じたアクションのスピードが大幅に早くなります。これをヘッドライト・オペレーション(前を見た管理)と呼んでおり、変化の激しい時代に新興国も含めた新しい環境で活動していく上で、非常に大きな利点になっています」

経理財務部門は新しい形への進化

では、ヘッドライト・オペレーションを実行する経理財務部門はどのような組織であるべきなのだろうか。松尾氏は新たな経営基盤としての経理財務部門は3層に分かれ、それぞれの役割で機能が異なる組織へと変わるという。

第3層は経理を担う部門で、この部分はどこの国でも均質なサービスを提供するためにシェアード・サービス化、アウトソーシングを行い、適切なコストと場所で行うことが多くなってきている。これも標準化されたことで実現できる利点である。

第1層はビジネス・ユニットのパートナーとして、収益率の向上のために収益の構造把握や分析、問題抽出、課題解決策立案を担う。従来の経理財務の知識や経験を生かし、ビジネスに直結する情報を現場で最前線にいる営業職などに出していく、また意思決定をサポートするという付加価値の高い業務に携わることになる。第3層をシェアード・サービスに任せることで余裕が出た人財がこうした付加価値の高い業務に移行していくことが要点となる。
そして、第2層の本社のCFO組織が環境変化やリスク・マネージメントについて判断をし、全体のバランスをとる。

「このように3層構造で考えることで、経理財務部門の価値を高めていくこと、ひいては人財育成やキャリアパスの道筋が見えてきます。もちろん、この前提には『標準化』『共通言語としての数字』またそれに対応できる人財が必須です」

厳密な経営管理をもとに戦略を立案する

共通のデータを見ることで、新興国の現地法人も、先進国の子会社も、日本本社も同じ視点での経営管理が可能になる。世界各国通用するマーケティングをし、開発し、販売、サポートを行っていく時代の中、グローバル事業を展開するために「数字」で語ることの重要性は、もっと理解され、浸透するべきだと松尾氏は強調する。

日本本社がグローバルでガバナンスを効かすには、日本式の義理と人情、あうんの呼吸では限界がある。経理財務部門にとって『共通言語としての数字』を軸に各国の人財が議論できる環境をつくる活動をすることが非常に大切で、加えて、数字を見るだけではなく、企業の各種の仕組みに反映される数字として機能させなければならない。

「100カ国を超えるような進出をしているような企業では、『共通言語としての数字』を軸に、経営管理をわかりやすくし、人事に反映する。また、将来に向けて手を打っていくヘッドライト・オペレーションへとつなげていかなければ、多様なグローバルの人財は動きません。
そのためにはグローバル全体で経営トップが見たい数字は何かを定義し、それを軸に管理体系を共通化しなければならないでしょう。プロジェクトでは世界各国に散らばる担当部門の人財が集まり議論を重ねて決めていくなど、丁寧な進め方をするケースもあります。とても苦労が続く作業ですが、この過程を経て各国の納得感を得ることで、仕組みが動き始めるのです。」

経理財務のグローバル化対応は、本社の戦略立案を助け、事業環境の変化に素早く対応し、課題解決やリスク管理を図るために無くてはならない取り組みである。それを成功させるために『共通言語としての数字』をどこまで早く効率的に収集し、それを経営管理にいかに適切に組み込むのかが成功のカギを握っている。


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