グローバル化 2012年06月21日

グローバル人財マネジメントとは、人の環流プロセスを実現すること最適な人財が最も必要とされる場所で能力を発揮するための仕組みづくり

日本企業にとって人財のグローバル化対応が急務になっている。早くから海外進出をしてきた企業ほど、人事の権限を海外現地法人に任せてきているが、ここに来て本社主導での見直しが始まっている。この背景には海外市場への移行に伴う拠点の増加、そして拠点を担う人財不足への危機感がある。日本IBMの戦略コンサルティングのパートナーが、グローバル人財マネジメントの要点を語る。

人財のグローバル化が困難な理由

IBMは数年に一度、グローバル企業の人事担当責任者(CHRO:Chief Human Resource Officer)を対象に調査を行い、そのレポートを「Global CHRO Survey」として発表している。

大池一弥
日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティンググループ パートナー

「人事担当責任者へのインタビューでは、今後、主戦場は新興国へ移るが、その新興国における人財マネジメントには多くの課題があるという認識が聞かれました。日本国内に限っては、人財戦略やそれを支える制度が確立しているケースでも、グローバルでの人財活用を検討し始めた途端、様々な不備が発覚し、急ぎ本社主導で整備を始めるというケースが多いようです」

日本IBMで人財戦略コンサルティングを担当するパートナーである大池一弥氏は、日本企業の状況をこのように指摘する。

人財のグローバル化対応には、3つのポイントがあると大池氏は言う。
1つ目は『人財の見える化』である。これができていない状態というのは簡単に言えば、グループ内にどのような人がいるのかを本社が把握できていないということだ。

「グローバル化していると言われる日本企業でも『人財の見える化』は意外に実現できていません。誰がどのような能力やスキルを持っているのかをわからないため、優秀な人財にリーダーシップ教育などの必要な人事施策を的確に打つことができないのです」

特にアジアパシフィック地域ではかつて現地法人任せの人事だったことが多く、ここに及んで何から手を付けていいのかわからないという事態になっているケースが散見されるという。また、そうした現地法人には独自のやり方が根付いていることが多く、本社のガバナンスが効かない傾向にある。

「『人財の見える化』ができないと、配置や育成という人事の基本的なことがまったくできません。加えて、優れた人財がいても現地に囲われてしまい、国を越えた配属など望むべくもありません」

『人財の見える化』を行うことで、2つ目のポイント『国を超えた人材配置』が可能になる。現地法人の社員にとっては登用される機会やキャリアパスが明確になり、また企業にとってはどんな人財の育成を行うことが、全体の利益に貢献することになるのかが明確となり、グローバルレベルで人財を循環させていくための道筋をつくることができる。

企業のブランディング、アイデンティティーが人財育成に与える影響

3つ目は日本企業がいま、力を入れ取り組んでいるウェイマネジメント、コーポレートアイデンティティーなどを通じた『共有すべき企業の価値観の浸透』の取り組みである。

「『共有すべき企業の価値観の浸透』が大切なのは、海外に進出するほど企業のブランディング、アイデンティティーが人財育成の観点で大きく影響を与えるからです。その企業のリーダー像、今後、求められる人財像には、国に関係なく必要とされる考え方や能力があります。企業のDNAやイズムのようなものを持ち、それを実践し、体現していていくのがリーダーであり、それを現地法人のリーダー層の全員が理解している必要があります」

『共有すべき企業の価値観の浸透』は求心力の源泉だが、これを浸透させる手順や手法については、海外展開が進んでいる企業も苦労を重ねてきている。国内であれば上司が自ら実践し、身をもって部下に教えるOJTなどを通じて継承されていくが、海外ではそうした取り組みがないため、理念や行動規範を文書で説明していく。しかし、紙に書かれたことを読んでも、実際のビジネスシーンで具体的にどう行動していくことがその企業のDNAや価値観にのっとることなのかについてはなかなか理解が進まない。ましてや、M&Aでグループ入りした企業や新興国で新しく作られた現地法人となれば、なおさらこの傾向は強くなる。


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