グローバル化 2012年05月31日

変化する「グローバル化」の意味加工貿易モデルから直接投資モデルへ

日本企業が取り組むグローバル化の意味が変化し始めている。新興国の急速な成長に対応した事業を展開するには、幾つもの課題を解決しなければならない。数多くのCEOへのインタビュー調査で明らかになった事実をもとに、日本IBMのコンサルティング・サービスのパートナーが、日本企業の新興国対応に向けた課題を明らかにする。

急速に進む加工貿易モデルから直接投資モデルへのシフト

IBMはグローバルで2年に一度、「IBM Global CEO Study」(以下、CEO Study)という大規模な調査を行っている。これは世界的な企業の経営者に直接インタビューし、経営者の課題と戦略的な方向性を探るものだ。2012年版では全世界で1,709名、日本では175名の経営者がインタビューに応じている。

日本IBMで戦略コンサルティングを担当するパートナーである池田和明氏は、多くのインタビューを通じて、日本の経営者の意識の変化をつぶさに見てきている。最近の経営者のコメントからは、日本の経営者のグローバル化に対する考え方が大きく変化していることが伺えるという。

池田和明
日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティンググループ パートナー

CEO Studyの『今後、3年間で最も影響を受ける外部要因の変化』という質問に対し、日本の経営者は2008年、2010年、そして最新の2012年も『グローバル化』と回答する比率が高くトップ3に入っている。これは日本の経営者に顕著な傾向で、欧米の経営者にとってグローバル化は5~6番目である。グローバル化は欧米では当然のこととして捉えられているが、日本企業にとっては現在でも重要な課題であることがわかる。

「しかし、同じグローバル化という答えでも、その意味するところが大きく変わりました。それは加工貿易モデルから直接投資モデルへの変化です。世界の主要市場に直接投資し、現地で事業を展開し利益を上げていくという考え方へのシフトが起こっています」

従来、日本企業のビジネスは加工貿易モデルであり、製造業が、海外から原材料を輸入し日本国内で付加価値を付け、北米や欧州に輸出する形であった。経済成長に伴う人件費の上昇と1980年代以降の円高の影響で、付加価値の低い工程をアジア諸国に移管してきた経緯はあったが、2000年代に入っても、加工貿易モデルは日本企業のグローバル化の根底にあった。

「日本の経営者の方々には、貿易立国という日本の国是を考え、日本を活動の中心として雇用を生み出し、日本で利益を出したいという意識が強くありました。しかし、2000年代後半から加工貿易モデルは通用しない状況にきています。いまや、製品・サービスの市場は先進国ではなく、新興国で急成長しています。2012年のいまはまだ新興国と呼んでいますが、10年後には世界の主要国になるでしょう。産業化が進み、教育レベルが高まり、優秀な人材が現れ、非常に早いスピードで豊かになってきています。
他方、日本では更なる円高が進行し、生産人口が減少していき、電力が不足しています。こうした環境変化の中、日本企業が従来採ってきた加工貿易モデルは非常に厳しい状況に置かれています。それが直接投資モデルへのシフトとして顕在化してきました。新興国に直接投資し、開発、生産、マーケティングなどの機能をワンセットで持たせる。そして、現地で利益を上げ、その配当を還流すことで日本経済に貢献するという考え方が急速に広まっています」

同時に人材についても大きく考え方が変わってきていると池田氏は指摘する。従来からの課題であった、日本企業は海外拠点での、現地人材の登用が進んでおり、同時に日本の本社や拠点にも海外の優秀な人材を活用していこうという機運が高まり、少しずつではあるが日本国内での外国人雇用が増えているという。

「海外の優秀な人材の登用は重要で、さらに日本にきて働いてもらうことで、日本人に刺激を与えることができます。それがグローバルに活躍できる人の循環を作りだし、企業そのものを活性化し成長につなげる契機になります」

直接投資モデルを採用し、人材を循環させ、グローバル市場で日本企業が成長することが日本経済のためにもなるという考え方は、製造業だけでなく、流通業やサービス業など、業種業態にかかわらない大きな傾向として広がっている。

日本企業はグローバルでいかに利益を上げるのか

日本の経営者の意識が大きく変わってきている中、課題もあらわになってきている。まず海外事業で利益を上げることは、ハードルが高いということだ。

「1980年代、ジャパン・アズ・ナンバーワンといわれた時代、自動車や電気製品が米国市場を席巻したように言われました。そのときも米国で利益を上げたのではなく、生産台数が増えたことで国内生産の効率が上がってコストが下がり、それを国内で販売して利益を上げていたのが実態でした。実は海外事業で利益を上げるというのはチャレンジなのです」

 

また、グローバルに展開し、事業を行う物理的な地域が多く、変化が激しい世界では、何が起こるのか予測できないという問題がある。


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