企業と顧客ではなく対等の「仲間」として
総販売枚数17万6988枚、合計寄付金額3億5397万6000円。今年3月「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」が企画した東日本大震災のチャリティーTシャツプロジェクトは、わずか半月の間にこれだけの“善意”を集めたという。
スタートトゥデイ代表取締役CEO前澤友作
1975年生まれ。早稲田実業高を卒業後、音楽活動のかたわらCDなどの輸入販売を開始。98年に法人化。2004年、ゾゾタウン開設。07年、東証マザーズに上場。
ファッションのECサイト(ネット通販サイト)としてはガリバー級の存在感を放つゾゾタウン。運営会社スタートトゥデイの前澤友作代表取締役CEOが2000年に開設した「オンラインセレクトショップ」をルーツに、04年、現在の体裁を整えた。以来、破竹の勢いで業績を伸ばし、11年3月期の売上高は前期比38.7%増の238億円。営業利益に至っては、なんと同80.8%増の58億円だ。会員数も伸び続け、313万人を突破した。
ファッションとECは本来なら「水と油」。試着できないうえ、洗練度もいまひとつ。安売りだけが唯一の突破口とみられていた。ところがゾゾタウンは、価格帯が高めで、今年3月までは返品も受け付けていなかったにもかかわらず成長を続けている。それはなぜなのか。ゾゾタウンとも取引のある大手アパレルチェーン関係者が謎解きしてくれた。
「通販は安っぽいという従来のイメージを覆し、ECにセレクトショップの“格好よさ”を持ち込んだことがスタート時点の勝因だと思います。その後、テレビやWEBを使った積極的なプロモーションで一気にメジャー化しました。しかもゾゾタウンは、規模が拡大しても格好よさを保つため、取り扱う商品の選別に気を使っています。その点では『何でもあり』の楽天などとは違いますね」
なるほどゾゾタウンのサイトは同業他社と比べて格好がいい。そして通がうなりそうな商品を並べている。よって、単価は決して安くない。ゾゾタウンで年1回以上買い物をした人の平均購入額は4万2697円と、けっこうな額だ。
要するにゾゾタウンというブランドそのものが、消費者の憧れを誘う「キラキラ」した価値観を発している。そのキラキラ感を損なわぬよう、みごとな手綱さばきをみせているのが前澤CEOだ。前澤氏は顧客との関係を「友達であり、仲間であり、パートナーである」と表現する。彼の中では、企業と顧客は当然のごとく対等なのだ。
「大事なのは商売ではない、というのが僕の考えです。『思い』を伝え、共有することが大切です。いまはたまたまファッションを扱っていますが、本来の目的は世界を平和にしたい、愛を大切にしたいという思いを共有することです」
そのために同社は、次のような仕掛けを用意している。
たとえばメッセージ配信サービスの「ZOZOARIGATO」。ゾゾタウンのサイト上で誰かへの「ありがとう」を自由に投稿・閲覧できるサービスだ。1投稿あたり10円が寄付される。
あるいは、商品とともに届けられる手づくり感覚のフリーペーパー。前澤氏が愛犬と戯れている姿が載っていたり、社員が登場して環境問題に関する考えを述べていたりする。
このような工夫をこらすことで、顧客と会社(もしくは前澤氏個人や社員)との距離がぐっと縮まり、顧客がついに「友達」になる瞬間が訪れる。たとえばフリーペーパーに付けたメッセージ用紙は回収率がいい。そこにはゾゾタウンへの要望のほか、私信のようにフレンドリーな文章が並ぶという。
商売より大事な理念「愛」の一文字が堂々と。もちろん社員同士も成果を競い合うライバルではなく「友達」や「仲間」。同社の給与体系はいまどき珍しい年功序列型で、ボーナスは全社員同額だ。学生が集まる会社説明会では、事業内容を説明するよりも、前澤氏自身の価値観を語る時間のほうが圧倒的に長いという。
ふんわりと笑いながら前澤氏が語る。
「僕自身、楽しんで働きたいんですよ。人を蹴落として勝つよりも、人の役に立ち、お互い幸せな気持ちになるほうが重要じゃないですか。仕事もプライベートも充実してこそ、人生は豊かになるはずだし、そうした生き方がスマートでしょう? 成果主義に背を向けて13年、こういう考え方でやってきましたが、おかげさまで業績は上がっています」
たしかにそのとおりなのだ。














