経営戦略 2011年09月07日

知的障害者が人生を教えてくれる工場日本理化学工業が成し遂げた本当の「偉業」とは

 それは、同社が人間の「本質」を浮き彫りにしているという点である。仕事に励む知的障害者の姿を通じて、「人が幸せに生きるために必要なこと」を私たちに鮮明に見せてくれているということだ。

 大山会長は自著『利他のすすめ』(WAVE出版)の中でこう記している。

<人間が生きていくうえで最も大切なことは何か──。
それは、とてもシンプルなことです。
「人の役に立つことこそ、幸せ」
この一言に尽きます。>

 人の役に立つこと、すなわち「利他」こそが幸せに生きる根本原理なのだという。

利他のすすめ』(大山泰弘著、WAVE出版、1400円、税別)

 チョークをつくる知的障害者たちは、なぜあんなに一生懸命働くのか。それは職場の仲間の役に立ちたいと思うからだ。

 そして、彼らはなぜあんなに生き生きと、幸せそうに働くのか。それは、職場の仲間の役に立っていることが嬉しいからである。

 彼らは自分の意志とは関係なく「知的障害」という苦難を背負ってしまった人たちだ。本人はもちろん、両親や周りの人たちの苦労は大変なものがあっただろう。彼らを「不幸な星のもとに生まれついた」と憐れむのはたやすい。

 しかし、毎日、にこやかに誇りを持って仕事をしている彼らと、毎日、「いやだ、いやだ」と憂鬱な気分で出社し、誰かを呪いながら働く健常者を比べると、どちらが本当に「幸せ」なのか分からなくなってくる。

 かつて禅寺の住職は大山会長に、人間の究極の幸せは4つだと説いた。その教えが正しいことを、工場の知的障害者たちは身をもって示してくれている。彼らは社会のことを知らない分、世俗的な野望や邪念がない。だからこそ私たちは、純化された幸せの本質を彼らの中に見出すことになる。

 同社を社会見学した小学校5年の生徒が、大山会長に手紙を送って寄こした。「神様は、どんな人にでも世の中の役に立つ才能を与えてくださっているんですね」と書いてあったという。

 おそらくその小学校5年生は、「チョーク工場」という名の学校で、これからの人生で一番大切なことを学んだのだ。


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