経営戦略 2011年09月07日

知的障害者が人生を教えてくれる工場日本理化学工業が成し遂げた本当の「偉業」とは

 「チョークというのは小さな業界です。チョークはまだ学校で結構使われていますが、将来性がある市場とは言えません。そのため大企業は参入してこないんです。また、チョークは景気に関係なく学校の先生が使ってくれます。だから中小企業でもやってこれた。そうしたことが前提となっていたからこそ、障害者を雇用できたんだと思います」

 そうだとしても、健常者なら簡単に理解でき、学べることが、知的障害者にはできない。どうやって教育し、仕事を覚えてもらったのか。

日本理化学工業の新開発商品「キットパス」。窓ガラスに描ける固形マーカー。パラフィンを主成分としており、濡れた布でさっと消せる。

 その疑問に対し、大山会長はこう答える。「彼らの理解力に合わせて仕事のやり方を変えたのです」

 例えば、チョークの原料の粉を、決められた重さだけ容器に取り分けるという仕事がある。重さを測るために秤(はかり)を使うのだが、知的障害者は材料袋の文字が読めず、秤の数字が分からない。どうすれば粉の重さを測ってもらえるのか。

 解決策となったのは、色合わせにより計量する方法だった。あらかじめAの材料は大きな缶に袋ごと入れて、ふたの色を赤く塗り、必要量の重りも同様に赤く塗った。Bの材料は缶のふたを青く塗り、必要量の青い重りを用意した。

 赤い缶に入ったAの材料を量る時は秤に赤い重りを乗せて、ちょうど釣り合うようにすればいい。これなら知的障害者にもできるのだ。

 この方法は、大山会長と健常者の社員たちが頭を絞って考え出した。「彼らは1人で信号を渡って会社に通ってくることができる。だから色は分かるんだということに、ある時気がついたのです」(大山会長)

 こうした様々な工夫や改善を積み重ねることで、知的障害者でもミスすることなく、一定品質のチョークがつくれるラインを築き上げた。

 大山会長は「一度仕事を覚えてもらえば、彼らは集中して仕事してくれます。健常者よりむしろ定着率もいい」とその仕事ぶりを賞讃する。

「幸せ」の本質を見せてくれる学校

 社員の7割以上という高い割合で知的障害者を雇用し、戦力としているのは、それだけで十分に経営の常識を覆す「偉業」と言えるだろう。だが私には、日本理化学工業という会社はもっと大きな価値を生み出しているように思える。


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