経営戦略 2011年09月07日

知的障害者が人生を教えてくれる工場日本理化学工業が成し遂げた本当の「偉業」とは

 大山氏がある法要の席に出向いた時、隣に禅寺の住職が座った。大山氏は何か話をしなければと思い、住職にこう話しかけた。「うちの工場には知的障害を持つ2人の少女が働いています。施設にいれば楽ができるのに、なぜ工場で働こうとするのでしょう」

 住職は少し間をおいて、大山氏の顔をじっと見つめてこう答えた。

粉が飛び散らない同社のダストレスチョーク。主原料は炭酸カルシウム。ホタテ貝殻を再利用したエコロジー商品である。

 「人間の究極の幸せはなんだと思いますか。それは次の4つです。人に愛されること。人に褒められること。人の役に立つこと。そして、人に必要とされること。

 愛されること以外の3つの幸せは、働くことによって得られます。障害を持つ人たちが働こうとするのは、本当の幸せを求める人間の証しなんですよ」

 大山氏はその話を聞いて、はっと気がついた。2人の少女がなぜあれほど働くのか。それは、働いて褒められ、人の役に立ち、人に必要とされることで、生きる喜びを感じていたのだ。

 大山氏は「少女たちが懸命に握りしめている『幸せ』を守らなければならない」と強く思った。そして、「少しでも多くの障害者に働く場所を提供しよう」と心に決めたのだった。

 その思いは、50年間ぶれることがなかった。掲げた目標を見失うことなく歩み続けた結果、今や知的障害者の雇用率は70%を超えるまでになった。

「理解力」に合わせて仕事のやり方を変えた

 普通の会社は、できるだけ「優秀」な人間を採用したがる。理想を言えば、一を聞いて十を知り、一つの命令で十の仕事をしてくれるような人間だ。実際はそんな社員ばかり揃えられるわけはないのだが、パフォーマンスの高い人間を雇いたいと考えるのは、会社として当たり前のことだ。

 しかし、日本理化学工業が行ってきたことは、まったく逆である。よほどの強い思いがなければ、50年にもわたって続けられることではない。

 同社は、文字や数字を理解できないような社会的「弱者」を抱えながら、トップシェアを保ち続けてきた。さぞかし並々ならぬ苦労があったことだろうと推察されるが、大山会長は「言われるほど苦労はしていないんです。私どもは恵まれていたんだと思います」と言う。


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