経営戦略 [PRESIDENT Online] 2009年11月13日

ニトリ―お値段以上で22期連続増益
いまどき増益チャンピオン【ニトリ】

 ご承知のとおりテレビCMなどで当社は「お、ねだん以上。ニトリ」というキャッチコピーを使わせてもらっています。扱っている商品の一つひとつが品質・機能のすべてにおいて「お値段以上」の価値がある。つまり「価格は安いけれど品質はチープではない」という意味です。そしてそのことについて、お客様が「お、」と小さな驚きを感じてくださる。

 「なぜニトリは売れるのですか?」という質問を最近よくいただきますが、答えはこのことに尽きると思います。

接客技術に依存する姿勢は全くナンセンスだ

似鳥 昭雄
ニトリ社長
1944年、サハリン生まれ。北海学園大学経済学部卒業後、67年「似鳥家具店」を創業。85年社名を「ニトリ」に変更。2002年東証一部に上場。09年2月期の連結経常利益は22期連続で過去最高になる見通し。
(撮影:若杉 憲司)

 2009年2月期まで22期連続増収増益を続ける家具店チェーンのニトリ。「ユニクロ以上」とも評される製造小売業のビジネスモデルで快走中だ。08年からは「円高差益還元」をうたい4度にわたる値下げを敢行するなど、不況を追い風に終始攻めの姿勢を貫いている。

 そもそも「売れる営業」「成績のよい販売員」に着目することに、どれほどの意味があるのでしょうか。よく「プレジデント」にも素晴らしい接客技術を持つ方が登場しますが、それが企業にとって本質的なことかどうかを考えなければいけません。僕はナンセンスだと思います。

 なぜなら、その人の神業的な技術によって一店や二店なら繁盛店にすることができるでしょう。しかし、その技術を標準化しチェーン化することは不可能です。会社を伸ばすためには本質的なことではないのです。

 その本質的ではないことに振り回されているのが日本の小売業です。「小売り=接客」という図式が当たり前のように信じられていますが、私にいわせればそれは誤解です。

 小売業の理想は、接客がなくても売れる状態にすることだと思います。私たちはそれを、科学と論理によって実現しようとしているのです。

 考えてみてください。家具屋さんでもどこでもいい、店内に入ったら店員が飛んできて、ずっと付いて歩くとしたら鬱陶しくないですか。お客としてはそう思うのが自然でしょう。これは世界中どこでも同じです。

 アメリカはそうだが日本は違う。北海道はそうだが関西は違う。文化が違うから接客の仕方も違うんだという人がいますが、ほんとうにそうでしょうか。みんな人間なんだから感じ方もベースの部分では同じだと考えるほうが自然です。

 もちろん高価な品であるとか説明が必要な商品はありますが、大部分は接客するよりも店頭の値札や説明書きに語らせるほうが、お客様に買い物を楽しんでもらえるのです。

 基本はセルフサービス。そして、どうしても説明を聞きたいという場合にだけ、お客様が店員に声をかけるという形が理想なのです。

 そもそも「接客が上手いから売れる」というのでは本末転倒です。小売業では挨拶、親切、整理整頓などを本社がうるさく指導することがよくありますが、逆にいうと、店員の挨拶がよくないと売れないのでしょうか。

 私はそうは思いません。もし店員の態度がよくなかったとしても、商品の品質がよくて十分に安ければ9割の人が買うでしょう。なぜならお客様は商品を買いに来るのです。店員の礼儀礼節や説明を買いに来るのではありません。

 もちろん接客態度が優れているのは好ましいことですが、それはあくまでもプラス・アルファの部分だということを忘れてはいけないと思います。

 また、日本流の接客を見ていておかしいなと思うのは、偏見や神話に基づく間違った知識を押し付けているということです。たとえば「ソファは少し硬めのほうがいいですよ」とよくいわれますが、医学的根拠はありません。話している当人は騙しているつもりはないでしょうが、結果として買う側の立場を考えない接客になっているのです。

 逃げ場として「感性」「多様性」という言葉を使うこともあります。私はそれを社内では一切許しません。数字の裏づけがある具体的な話をしなければいけない、ということを徹底しています。それは接客においても同じです。

 ニトリの強みは「低価格と高品質の両立」。しかし一部のホームセンター大手がPB戦略を拡大するなど低価格・高品質路線にはライバルも登場している。そのなかで差別化するには、もう一つ大事な要素が必要だと似鳥社長は指摘する。

 一言でいえば「品揃え」ということになります。ニトリではお客様が同じイメージでコーディネートできるように家具やホームファッションの商品を企画・開発しています。こういった統一感のある品揃えは、まだまだ他社には真似できないところだと思います。

 こうした品揃えを実現するための商品企画は、社長の私と社員たちとで議論しながら練り上げます。基本的には担当部署の社員たちがアイデアを出し合い、討論し合いながら次々と企画づくりを進めます。そのなかで私は、全体のプロデューサー役として大きな方向性を打ち出すほか、討論の場へも積極的に参加するようにしています。

企画力増に莫大な資金社員をラスベガスへ

 ただし、個々の商品を発売するか否かの決断は商品企画部門の責任者が行います。私が逐一、口出ししているわけではありません。

 売れる商品を企画する社員には共通点があります。国内外の小売業や飲食業の店を常にウオッチしておき、そこで見つけてきた問題点やヒントを商品開発に生かしています。

 これは企画だけではなくすべての部署についていえることですが、机上でマーケティング・データをもてあそぶのではなく、現場・現物・現実に接して発想するのです。そのうえで、観察力・分析力・判断力に優れた人が「売れる商品」をつくっています。

 あくまでも現場中心で物事を考える。その姿勢を徹底させるため、当社では毎年数百人の社員をアメリカ西海岸へ視察研修に行かせています。たとえば08年なら新入社員300人超と、3年経過するごとに実施する選抜試験に通った従業員、そして店長や商品部の人たち総勢880人を2回に分けて、8泊10日の日程でロサンゼルスとラスベガスへ派遣しました。うち100人ほどはパート社員です。

 現地では実際に小売店や飲食店を訪れサービスを体験させます。加えて朝と晩には座学の講義を行い、翌日に向けて宿題も出します。

 いまさら外国へ連れていって何が学べるのか、という声も聞かれますが、とんでもない。いくらでも学ぶべきところは見つかります。大事なのは「学び続ける」ということです。だからこそ当社は、上場企業平均の4・5倍もの教育投資を行っているのです。

PRESIDENT 2009.3.30号 掲載
面澤 淳市=インタビュー・構成 若杉 憲司=撮影

 


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