2010年08月26日(木)

ベンダーとのアウトソーシング契約で失敗しないためのコツ

ポイントは、契約締結の前に“ユーザー主導”で詳細な作業範囲記述書を作成すること

マイケル・オーバリー&マシュー・カーリン

外注におけるSOWの重要性

  ベンダーへのITアウトソーシングに際して、望む成果を予定の期間/コストで得られるかどうかは、すべて事前の準備にかかっている。期待する成果物を明確に定義し、過不足のない作業範囲記述書(SOW:Statement Of Work)を作成することで、発注側の企業はプロジェクト遅延やコスト超過、失敗の可能性といったリスクを軽減できるのだ。

 請負業者を利用するITプロジェクトは、大抵の場合、その成否が効果的な「作業範囲記述書(SOW:Statement Of Work)」を作成できるかどうかにかかっている。SOWとは、プロジェクトの要件を定義して明確にするためのもので、一般的には、専門サービス契約の付属文書として作られる。SOWには通常、提供するサービスの詳細な説明、成果物、進捗管理のための指標、支払い条件、サービス・レベル、容認基準、仕様、納期などが記されており、ビジネス上、非常に重要な文書となる。

 だが現実には、的確に書かれていないSOWも多く、そのせいで、企業がコスト超過やプロジェクトの遅延、さらには失敗といった、過剰かつ不要なリスクにさらされるケースが少なくない。また、すでに裁判所は、「ベンダーには、SOWで明確に定められた項目のみを提供する責任がある」との判断を下している。つまり、契約書で明確に提示されていないことについては一切、ベンダーに遂行の義務はないということだ。

 最近では、ベンダーの契約の進め方にもいくつかの変化が見られ、それがSOWに関する問題をさらに悪化させる要因にもなっている。ただし、以下に示すいくつかの点に留意すれば、ベンダーとの交渉で主導権を強めることも可能だ。

営業の圧力に屈しない

 SOWの作成に割り当てられる時間は、短縮される傾向にある。ベンダーはしばしば、「今すぐ、あるいは任意の期日までに契約に署名するなら」という条件で割引を提示してくるものだ。そうした販売戦術に乗せられ、SOWを作成する前に契約書に署名してしまう企業は少なくない。だが、その時点で、もはやユーザー企業側には交渉での主導権はほとんど残されておらず、「早くプロジェクトをスタートさせなければ」というプレッシャーが強まるだけだ。

 CIOはサービス契約の締結と同時にSOWを完成させられるよう、極力努めるべきである。もし、何らかの事情でそれが不可能なのなら、少なくとも「もしこの先、納得のいくSOWで合意に至らなかった場合には、さらなる責任を負うことなく契約をキャンセルでき、ユーザー企業側に支払い義務は一切ない」と明記した条項を契約に含めておくべきだ。さらに契約には、SOWを完成させる現実的な期日も明記しておく必要がある。こうしたやり方ならば、契約に署名した後でも、CIOには依然、有利なSOWを交渉するための力が残されることになる。SOWの交渉における力関係は、特にソフトウェア使用許諾契約では重要だ。SOWの交渉がライセンス料の支払いにも影響するからである。

要件を明確にする

 また、別の憂慮すべき傾向としては、「ベンダーがSOWとして提案してきたものを、そのまま使用してしまう」というものがある。ベンダーは通常、実行すべき作業範囲の提案を用意するものだが、それはあくまでも“営業用”の文書であり、サービスの概略や要点がまとめられているにすぎない。普通、そうした文書は契約書として書かれたものではなく、SOWにはふさわしくない要素が含まれている場合も少なくない。

 そのうえ、多くの場合、こうした文書には提供すべき具体的なサービス、コストの内訳(概略ではない)、容認基準、納期といった基本的な事柄の詳細が明記されていない。それにもかかわらず、こうした提案には大概、その文書を拘束力のある契約にするための法律用語や署名欄が含まれているため、ユーザー企業にとっては非常に危険だ。

 もう1つの過ちは、「ベンダーが提供するテンプレートを使ってSOWを作成する」という行為である。そうしたテンプレートは確かに枠組みとしては便利だが、その案件ならではの独自の要件を盛り込んだり、顧客の仕様に合わせて変更を加えたりといったこともせずに、そのまま最終的な文書として使ってしまうケースがあまりにも多いのだ。

 そのうえ、ベンダーが用意する書式では、「責任」ではなく「目標」、「確定価格」ではなく「見積もり」といった具合に、顧客よりも自分たちベンダーにとって有利な表現が多用される傾向がある。こうした表現を使うことで、自分たちの責任を軽減しようというわけだ。ベンダーと交渉しながら、自分の言葉でSOWを作成してこそ、企業は要件の変更や遅延、価格上昇などの不利益から自らを守ることができる。

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