TVからWebサイト、モバイルへと広がる通信販売
米国の大手通販会社QVCは、TVの通販番組に始まり、オンライン・ショッピング・サイトの開設を経て、いち早くモバイル販売にも着手した。ここでは、顧客の声を取り入れ、モバイル売り上げの向上に挑む同社の取り組みを紹介する。
QVCにとって、ホーム・ショッピングとは、もともとは顧客がTVで見た商品をフリー・ダイヤルで注文することだった。だが、同社が1996年にWebサイトでの販売を開始すると、多くの消費者がWebサイトからの購入へと移行した。そしてQVCでは現在、どんな携帯電話からでも、テキスト・メッセージを送れば数秒で商品を買えるようにしている。
2008年にモバイル・コマース市場に(小売大手としてはいち早く)進出して以来、QVCは「何をすべきであり、何をすべきではないか」について多くを学んできたと語るのは、同社マルチチャネル・プラットフォーム担当上級副社長のアンジー・シモンズ氏だ。ただし、モバイル販売を行うべきかどうかは議論するまでもなかったという。
「消費者は皆、忙しい生活を送っているが、携帯電話を持ち歩かない人はいない。彼らはモバイル販売を求めていた」(シモンズ氏)
QVCは、モバイル販売を“小さく”始めた。つまり、同社のアカウントを持つ顧客が、商品番号をテキスト・メッセージで送信すれば商品を買えるようにしたのである。だが、購入者はそれだけでは物足りず、QVCにお勧め情報の配信を要望した。
「モバイルは、まさに双方向のチャネルであることを実感した」(シモンズ氏)
そこで、QVCは昨年初頭、美容グッズやDVDプレーヤなど、各種商品の日替わり特売情報を配信するモバイル・アラートを開始し、アカウント所有者が配信を申し込めるようにした。アラートにテキスト・メッセージで返信すれば、顧客は特売品を購入できる仕組みだ。
「Webサイトへのリンクをアラートで送信するという方法をとることもできたが、その場合、購入手順が増えるうえ、不安定な携帯電話回線のせいでトランザクションが失敗する可能性も高まる」(シモンズ氏)
モバイル・サイトは手軽さが命
QVCが行った最も重要な決定は、通常のWebサイトよりもグラフィックスやリンク、テキストが少なく、スマートフォンで使いやすい簡素なサイトを構築するようにしたことだ。Webサイトのパフォーマンス・テスト/測定ツールを提供するキーノート・システムズのモバイル・インターネット技術担当シニア・マネジャー、ケン・ハーカー氏は、「近い将来、電子商取引で最も有望なのは、手軽でシンプルなモバイル・サイトだ」と予測する。
「モバイル・コマースでは、Webページが高速に読み込まれる(ロードされる)ようにしなければならない。最長でも8秒以内にだ」とハーカー氏は説明する。そのためには、サーバと商品データベースのロード・テストを行い、要素が少ないWebページを設計し、各ページのサイズを100KB未満に抑える必要がある。キーノート・システムズとQVCの間に取り引きはないが、QVCも同様のガイドラインに従っているとシモンズ氏は語る。QVCは、昨年の全売上高74億ドルのうち25%をオンライン販売で稼いだが、このうちモバイル販売の内訳は明らかにしていない。
だが、こうした先行事例に学んでいない企業が多い。キーノートが昨年の年末商戦期に実施したモバイル・コマース・サイトの調査では、Webページのロードに最大34秒、検索結果の表示に最大38秒もかかるケースがあった。これでは、顧客が離れてしまうだろうとハーカー氏は語る。
iPhoneアプリへの対応
モバイル・コマースにおいてやるべきことは、テキスト・メッセージのサポートやWebサイトの簡素化といった当たり前のことや、実行しやすいことばかりではない。昨年12月、QVCはiPhoneアプリを公開した。顧客はこのアプリを使って、日替わり特売の情報を閲覧したり、商品を検索したり、商品について電子メールを送信したりすることができ、もちろん商品を購入することも可能だ。
しかし、競合するホーム・ショッピング・ネットワークの iPhoneアプリとは異なり、QVCのiPhoneアプリには自社のTVショッピング番組をストリーミング配信する機能はない。そして、顧客はこの違いに気づいている。
シモンズ氏は、QVCはまだiPhoneユーザーにとってどのようなサービスが最適かを見極めながら、適切な対応を検討しているところだと説明する。例えば、QVCは同社のTVショッピング番組にアクセスできるiPhoneアプリの新バージョンをリリースする計画だ。シモンズ氏は、「顧客の声に耳を傾け、最新の動向を踏まえながら、QVCのモバイル・プロジェクトを展開していくつもりだ」と意気込みを語る。














