2010年08月24日(火)

低予算で販売増:モスフードサービス【1】

やっかいな問題を解決する議論の進め方

長山清子

テレビCMより「ケータイ」「チラシ」が効く

「モス寄ってく?」。学校帰りにモスバーガーにやってきた高校生たち。一人の男子高校生が、モスのきれいな女性店員に接客されて思わずドギマギ。友達に冷やかされたところで、「それが青春、モス気分♪」という歌が流れる……。

 このモスバーガーのテレビCM、実は関東地区では流れていない。

「いま東京近辺ではテレビCMを流す量を控えています」

長らく店舗開発・調査畑を歩み、08年3月、マーケティング部シニアリーダーに就任した齊藤雅久氏。手前は、1972年東京・板橋生まれという設定のマスコットキャラクター「モッさん」。

 こう語るのは、モスフードサービスマーケティング部の齊藤雅久氏だ。

「東京というのはかなり特殊な市場で、お店の数も消費の動向も、相当尖っている部分があります。そういうところでテレビCMを打っても、費用に見合うだけの効果は得られにくい」

 競合他社であるマクドナルドは盛んにテレビCMを流しているが、それもモスの倍以上の店舗数があればこそ。モスの場合、むしろ地方のほうがテレビCMの効果は高い。

 それではテレビCMに代わる販促方法は何か。齊藤氏がリーダーを務めるマーケ企画グループおよび販売促進グループは、週1回の会議でそれを模索し続けた。毎週火曜日13時からの会議には、マーケ企画グループの5名、販促グループの15名の計20名が、来客や出張がない限り必ず全員出席する。時間は1時間と決め、延長はなし。

 その会議で出てきたのが、携帯サイトの運営や駅貼りポスター、新聞折り込みチラシなどのアイデアだ。テレビCMを控えたことで浮いた約2億円をこれらに振り分け、売り上げ増につなげた。

 具体的にはまず春のキャンペーンにおいて、1店舗あたり通常は5000~6000枚のところ2万枚の新聞折り込みチラシを撒いた。

「3月末から4月の上旬にかけては、卒業、入学、入社などで人が動きます。その時期に、一番近いモスバーガーはここですよ、とわかっていただくためです」

 しかしチラシを撒く範囲を広げると、近隣の店とエリアがかぶってしまう。フランチャイズの加盟店からすればありがたくない話だ。そこで1枚のチラシに複数の店舗を掲載することでそれを解決。

 さらにこの時期は「とびきりハンバーグサンド」の第二弾キャンペーンとも重なっていたので、この商品ポスターを山手線の主要駅構内で展開した。

「B0サイズの大型ポスターを二面でつなげたり、四面でしつこく見せたり。“山手線内をジャックする”というところまではいきませんでしたが、相当目につくところに置けたと思っています」

 と齊藤氏は振り返る。

 定例会議の進行役は、議題によってその都度代わる。つまり夏のキャンペーンについての会議ならその担当者が司会も務めるというように、それぞれの担当者が仕切るのが決まりだ。

「実行部隊の者が仕切るほうが効率的ですから。私はどちらかというと全体の流れを見ていて、たまに方向性をアジャストするくらいですね」

 と齊藤氏。その際の判断基準は、お客様の立場に立って考えたとき、それが本当にベストかどうかということである。

「言い方はちょっとキザですが、会社としてのスタンスよりも、お客様のご利用シーンから考えるようにしています」

 そしていまモスが取り組んでいるのが、若年層の取り込みである。冒頭で紹介したCMはその一例だ。

「いままで大人のお客様に向けてきちんとした商品を提供するという戦略をとってきた関係で、どうしても大人が使いやすい店になっています。いままでのお客様を大切にしながら、もっと幅広い客層に来ていただくようにしたい」(齊藤氏)

※すべて雑誌掲載当時
 
PRESIDENT 2009.8.17号 掲載
増田安寿=撮影
構成=プレジデント編集部
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