SaaSでバックアップ管理の手間を軽減
米国ニューヨークに本社を置く保険会社デルファイ・キャピタル・マネジメントは、年間売上高10億ドルの上場保険持ち株会社デルファイ・フィナンシャル・グループの子会社である。同社でCTO(最高技術責任者)を務めるフィル・メンテサナ氏は、「基幹データをテープにバックアップし、安全に保管するためにオフサイトまで運ぶ」というやり方はあまり効率的ではないと考えていた。
その理由の1つに、管理者がテープの整理とラベル貼りに週20時間も費やしていたことがある。また、信頼性の面でも、度々テープにトラブルが発生し、IT部門の手間と運用コストが増えていた。「システムが古く、頻繁に修理しなければならなかった」とメンテサナ氏は振り返る。
従来からあるオンプレミス型(自社運用型)のデータ・バックアップ方式を使うという選択肢もあったが、同社では最近人気が高まっているクラウド・ストレージを使うことにした。以前勤めていた会社で導入し、メンテサナ氏としてはすでに利用実績のあるi365の「EVault」というSaaS型のオンライン・バックアップ・システムを採用したのだ。
EVaultは、デルファイ・キャピタルのデータを自動的に圧縮/暗号化し、インターネットを介してi365のデータセンターに転送する。どのデータをどれくらいの頻度でバックアップするかはデルファイ・キャピタルが決めるが、データの転送からオフサイトへの格納、バックエンドにあるハードウェアのメンテナンスはすべてi365がやってくれる。
また、デルファイ・キャピタルのデータは機密性が高く、量も膨大であることから、自社のデータが他社のデータと混在するのは避けたいと考えたメンテサナ氏は、専用のストレージを割り当てるよう強く求めた。さらに、専属のストレージ・マネジャーを配置させることで、いつでも英語によるテクニカル・サポートを得られるようにしたという。
SaaSへの移行によるメリットと、ありがちな誤解
デルファイ・キャピタルはEVaultに移行する以前、自社サーバに2台のテープ・アプライアンスを接続して750GBの未圧縮データをバックアップしていたが、毎週テープを梱包してラベルを貼り、オフサイトの施設まで運ぶ手間をなくすことで、約6万ドルの年俸を支払っていたIT管理者が不要になった。さらに、同社のIT部門はログを調べてバックアップ・エラーを探す必要もなくなった。「EVaultは障害が発生すると、管理者に自動的に通知してくれるので、管理者はより多くの時間をほかの作業に割けるようになった」とメンテサナ氏はその利点を強調する。
そのうえ、保守/アップグレードもi365が行うので、従来は1万ドルかかることもあった保守/アップグレード費用が不要になった。
「ドライブやテープ・ジュークボックスだと、いつ交換すればよいのかがわかりづらいが、EVaultなら全ストレージの容量が残り少なくなったときにバックアップの予算を組めばよいだけだ」(メンテサナ氏)
ただし、クラウド・サービスは必ずしもコスト面で優れているとは言えないようだ。同社がクラウドに移行する前に、オンプレミスでのバックアップ・システムとSaaSモデルの費用対効果を1週間かけて詳しく比較/分析したところ、「両者のコストはほぼ同じで、その差はプラス・マイナス5%程度だった」(メンテサナ氏)という。
加えて、SaaSは導入が簡単だというのも、よくある誤解だ。メンテサナ氏によると、同社は回線に障害が起こった際にトラフィックが別の回線に自動的に接続されるよう、バックアップ回線を追加して2カ所の接続拠点を設ける必要があった。2本目の回線の追加コストは月額1,250ドルだ。
それでも、氏は万一に備えた確実なデータ・バックアップには対価を払う価値があると考えている。「テープ・メディアは信頼性に劣る」(メンテナサ氏)からだ。デルファイ・キャピタルにとっては、これだけでSaaS型オンライン・バックアップに移行するには十分な理由なのだ。














