2010年07月27日(火)

下請け中小零細企業が大企業に勝つ方法

下請けいじめ

双方の合意があっても「下請法違反」となる!

 厳しい経済状況を反映して、下請けいじめが増えている。2008年度、下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)に基づいて公正取引委員会が勧告を出した件数は15件。04年の改正下請法施行以降、過去最高になった。

 下請法では、支払いの遅延や代金の減額など、優越的な立場にいる親事業者が下請事業者の利益を不当に損なう行為を禁じている。しかし、適用範囲は意外に狭い。対象になるのは、製造、修理、情報成果物作成、役務提供の4つの委託取引。建設業は建設業法に類似の規定があるため、下請法の対象とはならない。また、運送やホームページ作成など、実際に下請けいじめが横行しがちな取引は対象外だ。

 資本金による区分にも注意したい。製造委託の場合、下請法が適用されるのは「親事業者が資本金3億円超で、下請事業者が3億円以下」、あるいは「親事業者が資本金1000万円超3億円以下で、下請事業者が1000万円以下」の組み合わせのみ。例えば資本金100億円の大手メーカーが、資本金5億円の部品メーカーに減額を強要したとしても、資本金区分で適用外となる。このようなケースからも、下請法は必ずしも実態に即しておらず、形式的に適用されていることがわかる。

 形式的という点では、双方の合意があっても下請法が適用されることに留意したい。下請事業者が次の受注を期待して減額を了承するケースは少なくないが、仮に合意書があっても、親事業者が発注時の代金を減額すれば直ちに下請法違反となる。違反があれば、公取委から改善措置を取るよう勧告や警告などの行政指導を受ける。しかも勧告の場合には、社名や違反事実の概要が公表される。親事業者となるような大企業にとって、企業イメージの低下につながる違反事実の公表は、避けたいところだろう。

 対象取引や資本金区分で下請法適用外でも安心はできない。下請法は、独占禁止法で禁じる「優越的地位の濫用」(公取委告示で定める「一般指定14項」)の規制を補完的に類型化したもの。下請法で違反にならなくても、優越的地位の濫用に該当するとして独禁法違反になる恐れがある。

 独禁法は2009年6月に改正され、優越的地位の濫用については「売上額の1%」が課徴金として賦課されることになった。独禁法の規制が強化されたので、その補完法的性質を持つ下請法も、いずれ強化への動きが出てくるだろう。

 規制強化の動きは、下請けいじめに遭っている企業には朗報である。現状では公取委に被害を申告しても動きが鈍いのが実態だが、企業イメージの低下を恐れる親事業者に向けては、公取委に申告するというだけで大きなプレッシャーになる。下請法・独禁法という伝家の宝刀をチラつかせながら、賢く交渉したい。

※すべて雑誌掲載当時
村田恭介(むらた・きょうすけ)
弁護士
1984年、関西学院大学法学部卒業。95年弁護士登録。2001年、神戸大学法学研究科後期課程修了(法学博士)。現在、きっかわ法律事務所パートナー。著書に『これだけは知っておきたい!独禁法』。
PRESIDENT 2009.8.3号 掲載
構成=村上 敬
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