2010年04月27日(火)

経営者よ、甲羅よりも大きな穴を掘れ

イノベーションとグローバル展開で、リスクを取って前進せよ

東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科教授 伊丹敬之

日航の低迷と混乱は日本企業の病の象徴

 日本航空が会社更生法適用を申請して、事前調整型の法的整理に入ることになった。素朴に考えて、長期的にもっとも再生に貢献する道を政府が選んだということだろう。たしかに思い切った再生案だが、そのくらいやらなければダメであろう。

 多少はこの問題に関係があった私も、納得である。私は2009年8月初旬から1カ月強の間だけ存在した国土交通省の「日本航空の経営改善のための有識者会議」のメンバーだった。航空問題にはまったくの素人の私が、しかも企業の経営についてはとかく辛口の私が会議への参加を求められたとき、自分でも驚いた。

 しかし、それは自民党政権の最末期の会議発足だった。総選挙前に会議が1回、総選挙後で組閣直前に1回、計2回の会議が開かれただけで、新しい前原大臣は就任後直ちにこの会議を白紙に戻すと記者会見でのべた。それで終わりだった。同じ会見で、日航の法的整理は考えないと大臣がいっておられるのをテレビで見て、大丈夫かなと心配するだけだった。

 私はこの会議のメンバーを引き受けてすぐに、何人かの経済人に日航再生の基本方向について意見を求めたことがある。答えは異口同音に、法的整理で会社をいったんきれいな体にすべき、だった。しかし、「できるかどうか」というコメントもついていた。

 私も多少は調べ、内部に詳しい人の話も聞いて、同じ意見だった。そして、それを会議のための打ち合わせの場などではっきりいっていた。素朴に考えれば、ここまで改革が混迷していて年金や労組の問題がある企業が再生するには、いったん思い切った措置をとるほうがかえってみんなのためになる、と思ったのである。

 しかし、そんな意見を会議の場で主張する機会もなく、会議自体がなくなってしまった。その後の政府の対応の迷走は周知の通りである。やっと本来の姿に戻った、というのが私の感想である。

 日航の低迷とそれへの危機管理の混乱は、多くの日本企業にとって、程度の差こそあれ他人事ではない。日本企業が今おちいっている病、「こわごわの経営改革」「そろりそろりの戦略展開」の象徴のように私には見える。

 素朴にきちんと考えれば、今なにをすべきか、どの方向へと走るべきか、かなり明瞭な企業が多い。しかし、さまざまなしがらみが企業の内外にある。資源や能力が十分か、自信がない。経営陣にも決断のできる人が少ない。だから、「こわごわ」「そろりそろり」になる。しかしそれでは、成果が出てこない。出ないから、「やはりその路線は無理なのでは」という意見が出てきてしまって、さらに前進のエネルギーがそがれることになる。

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