2010年02月25日(木)

100億円「ファブリーズ」マーケティングの新方程式

流通科学大学学長 石井淳蔵

なぜファブリーズは日本ではヒットしないと見られたか

 コーポレート・ブランド戦略とポジショニング戦略とのいわば中間にある戦略、ブランド・エクイティの拡張戦略を検討する。ケースは、P&Gファブリーズである。

 1998年に、P&G社は、布製品用スプレー・タイプ消臭剤としてファブリーズを日本市場に導入した。ファブリーズは、それを衣類にスプレーすることで、布にしみついた臭いが消えるという効能をうたってアメリカではヒットした。だが、日本ではうまくいかないのでは、と考えられた。というのは、アメリカの生活スタイルと日本のそれとは、かなり違っているからだ。

 自宅で靴を履いたまま生活するアメリカ人と、靴を脱いで生活する日本人。大きい犬を自宅で飼うアメリカ人と、その習慣があまりない日本人。カーペットの上で生活するアメリカ人と畳の上で生活する日本人。こうした生活スタイルの違いを反映して、アメリカ人に比べて、日本人は生活の中で布製品の臭いに対する敏感さが乏しく、その分、ファブリーズを使う機会は限定的ではないかと思われた。

 さらに日本では、室内用の消臭用製品としては、置き型消臭剤が一般的で、臭いをとるためにスプレーをかけるという習慣自体が馴染みのないものだった。つまり、それまでの常識に基づき、日本における衣料用消臭スプレーの市場は、限定的なものになると思われた。

 ところが、P&Gは大胆なマーケティング予算の投入を行った。車の中の臭いやソファに付いたペットの臭い、カーテンについた焼き肉の臭いなどをファブリーズを使ってとるという、限定的だが非常にわかりやすい内容のテレビ広告を大量に流した。

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