経営戦略 [JBpress] 2010年02月24日

顧客が驚く金型技術と社長の手品(伊藤製作所・三重県)

 そこで息子の澄夫氏が学校を卒業すると同時に、金型部門を設立し、澄夫氏を責任者に据えた。当時は電機・機械を中心に生産がどんどん伸びていった時期。面白いように注文が来て、金型部門は順調に発展していった。

 澄夫氏は当初から「一歩先を行くモノづくり」をスローガンに新しい技術に取り組み、最新の機械を導入し続けた。例えば放電加工機やCAD/CAMを80年代から導入している。CADは当時1セットで4000万円近かったが、前に作った設計データを活用できるので、時間が立てば立つほど効率が高まる。しかも図面を完成すれば、そのままダイレクトにNC加工できることを見抜き、他社に先駆けて導入した。

 また、澄夫社長がユニークだったのは、金型を作るだけでなく、自社でプレス加工も手掛けたことだ。多くの金型屋さんは、金型を売る際にノウハウが漏れるし、買い叩かれる。その点、自社で金型製造からプレス加工まで行い、その製品を売れば、安定した仕事になる。

 現在では、無人化、高速化、精密化を追求すると同時に、冷間鍛造の要素を取り入れ、他社ではとてもできない技術を実現している。例えば厚さ8ミリの鉄板に、0.5ミリ径の抜き穴をプレスで空ける。穴の精度は高く、コストはドリルで空ける方法の数分の1。また、歯車や多数の突起などがある部品を、プレス一発で絞り出す。コストは切削加工の10分の1以下になる。

フィリピンで現地技術者を育成

 同社は97年にフィリピンに進出した。あえてフィリピンを選んだのは、英語が通じ、国民性が穏やかだということもあるが、それ以上に、かつて漁網工場に働きに来ていて、よく気心の知れたフィリピン人がいたというのも大きな理由だ。

 結果は大正解だった。競合が少なかったため、現地の家電メーカーや自動車部品メーカーから注文が舞い込み、フィリピン工場は進出1年目から黒字になった。

 フィリピンでは中小企業でも優秀な大卒を採用できるため、難しい金型を製作するには好都合だ。


この記事を印刷する
このエントリーをはてなブックマークに追加

経営戦略 一覧ページへ

媒体最新記事一覧
PAGE TOP