経営戦略 [ダイヤモンド・オンライン] 2010年02月04日

管楽器の金属めっきで圧倒的No.1 日本電鍍工業

時計で培った高品質なめっき技術

 自社製のめっき液を多種類揃え、難しい厚めっきをむらなくこなす。管楽器へのめっきは一部楽器メーカーの内製を除くと、製品の国産比率が高いサクソフォン、フルートで推定95%以上のシェアを持つ。

 日本電鍍工業は創業から50年の歴史を持つ金属めっき加工の老舗企業。金やプラチナなどの貴金属めっきが得意で、時計をはじめ管楽器、電子部品、宝飾品、医療機器など幅広い分野のめっき加工を手がける。

 1990年代まで売上の約9割は時計部品によるものだったという。しかし、同分野の需要の冷え込みをきっかけに、2000年代に入ると現在の業態 に路線変更した。それまでの時計一本というこだわりを捨て、時計で培った高品質なめっき技術をコアコンピタンスとして、他の分野で生かす道を選択したので ある。この方針が的中。現在ではさまざまな分野で取り扱いボリュームが拡大し、大きく飛躍を遂げつつある。

 その代表例がフルートやサクソフォンなど管楽器のめっき。フルートの場合は国内に15社ほどの楽器メーカーが存在するが、日本電鍍工業はそれらの すべてのメーカーと取引を持つ。「楽器の種類や用途によってめっきを内製するメーカーもあるので、総量を把握することは難しいですが、めっき会社による外 製市場に限定すれば、国内シェアは95%以上あると推定されます」(同社)

 多くのめっき会社が市販のめっき液を使用しているのに対して、金やプラチナなどを中心に自社製のめっき液を多数揃えていることが強みだ。ひとくち に金めっきといっても、鉄や銅、亜鉛などさまざまな金属の合金が使われ、これらの金属の配合率によって色調をはじめ強度や耐食性などの機能が著しく変わっ てくる。市販のめっき液はすべての含有成分を公表しているわけではないので、めっき後の状態が不安定になりやすいが、自前のめっき液を使うことで成分を正 確に把握でき、再現性がきわめて高いという。

なぜ顧客にリピーターが多いのか

 さらに同社には厚めっきの技術がある。金めっきの場合、フルートで約8マイクロメートル、サクソフォンでも約4マイクロメートルのめっき厚を必要 とする。「貴金属めっきは、厚く盛るほどむらが生じたり磨耗しやすくなったりするものですが、当社の技術ならそのようなことは起こりません。ピンクゴール ドのような変色しやすい色調のめっきでも問題なく対応できます」と伊藤麻美社長は語る。

 高品質の厚めっきを実現するには適切なめっき液と時間の管理が必須となるが、決め手はそれだけではない。通常、管楽器の素材には銀、真ちゅう、洋 白(銅合金)などが用いられている。最終的には表面に金めっきを施し、美しい色調に仕上げる。しかし、素材に直接、金をめっきすると剥離しやすくなるた め、金めっきの前には銀などで下地を作るのが一般的な方法だ。

 これに対し、同社では銀の下地を作る前に、素材に対して金のストライク(薄膜)を施す。これはめっき層の密着性と耐腐食性を高めるためであり、そ のうえであらためて下地を作る。そのぶんコストや手間はかかるが、品質向上のために欠かせない工程だという。リピーターが多く、圧倒的なシェアを保持する 背景には、こうした地道な努力があったのだ。

 同社の技術力は、品質の厳格さに定評のある時計業界で鍛えられた点が大きい。「時計メーカーとめっき液を共同で開発したり、当社では購入できない ような高価な検査装置を使って性能評価をしていただくなど、メーカーとはよい協力関係を築いてきました。他の分野が伸び、当社での時計の仕事の割合は2割 以下に低下しましたが、今日の当社があるのは時計業界のおかげです」(伊藤社長)。業績は上昇基調にあり、さらなる新分野の開拓を狙っている。

日本電鍍工業
埼玉県さいたま市北区日進町1-137 電話048-665-8135

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