データ・プライバシーに対する経営層の意識
TwitterやFacebookといったソーシャル・メディアの登場によってWeb上でのコミュニケーションが容易になった反面、これまで以上に個人/企業のデータが外部に流出しやすくなっている。ソーシャル・メディアをビジネスに活用しつつ、自社および顧客のデータ・プライバシーを確保していくうえで、CIO(最高情報責任者)をはじめとする企業の経営層は何を考えるべきだろうか。本稿では、ソーシャル・メディアの普及が進む今、データ・プライバシーを巡って生じうる問題を明らかにするとともに、それに対処するうえで経営層が知っておくべき専門家らの見解を紹介する。
企業の経営層を代表して情報システム部門を統括するCIOにとって、データのプライバシー保護問題は、「運動が苦手な人にとってのエクササイズ」に例えられるだろう。つまり、「これから味わうであろう苦痛を想像して、思わずため息をついてしまうような存在」だということだ。患者のプライバシーが何よりも優先される医療業界など、特に規制の厳しい業界は別として、通常、CIOがプライバシー問題の影響を受けるのは、何かしらのセキュリティ侵害(数百万人規模の個人情報が保存されたノートPCの紛失や、ハッカーによる顧客データの窃盗など)が生じたときである。
サンプリング調査会社、米国サーベイ・サンプリング・インターナショナル(SSI)の元CIO兼CPO(Chief Privacy Officer:最高プライバシー責任者)であるピーター・ミラー氏は、「多くのCIOはプライバシー問題を気にかけていない」と指摘する。
「ほとんどのCIOは、テクノロジーの問題だけに専念しているか、プライバシーはCPOかCSO(Chief Security Officer:最高セキュリティ責任者)の仕事であり、CIOの業務領域外の問題だと考えている。だが、それらは誤った考え方だ。プライバシー問題に関して、CIOは率先して予防策を講じるくらいの姿勢でいなければならない」(ミラー氏)
ミラー氏によれば、その理由は、ビジネス環境のデジタル化が進むにつれて、より一層明白になるという。例えば、Web 2.0型のアプリケーションは、レゴ・ブロックのように互いをつなげられるようになっている。これにより、企業は膨大な量のデータを簡単に収集できるようになった。
また、人々はソーシャル・メディアやブログで、自身に関するさまざまな情報を公開するようになりつつある。これを受け、マーケティング会社は高度なツールを開発して、オンライン上での人々の行動を追跡している。企業がビジネス・パートナーのために機密情報を提供するといった行為も、日常的に行われているものだ。
さらに、クラウド・コンピューティングによるサービスを利用する場合、企業は自社のデータの管理をサービス・プロバイダーに委ねることになる。このような流れは、人々の行動をかつてないほど深く洞察することを可能にし、新たなビジネス・チャンスを生み出すが、その一方で、プライバシーに関するやっかいな問題も作り出す。そして、それらの問題に関して、明確な解決策はまだ見つかっていないのが現状だ。
個人情報は、だれのものか?
ミラー氏は最近、以前に委託調査を受託した小売業者から、ある要請を受けた。調査対象者についてのデータを提供してほしいと言うのである。「それはできない」とミラー氏が断ると、その業者は驚き、不満そうな顔をしたという。彼らは、自社の顧客についてすでに膨大な量のデータを収集しており、同じようなデータの提供を受けることがなぜ問題なのかを理解できなかったのだ。しかしミラー氏は、データを業者に渡すことはプライバシーの侵害であり、契約違反になると考えていた。もし、調査対象者の個人情報を無断で第三者に渡したことが明らかになったら、SSIは事業を継続できなくなるほどのダメージを受けるおそれがあった。
ミラー氏は、この業者のような考え方は、一部の業界に特有の病気のようなものだと話す。多くの企業は、自分たちが集めたデータは(自分たちの依頼した業務で第三者が集めたものも含めて)自分たちの所有物だと考えがちだが、ミラー氏によれば、それは間違った認識だという。それではいったい、正しいのはどちらなのだろうか。
これは、CIOにとってはそれほどなじみのある問題ではないのかもしれない。10年前、当時サン・マイクロシステムズのCEOだったスコット・マクニーリ氏は、「プライバシーなどはもはや存在しないのだから、それに慣れていくしかない」と述べた。このころから、人々は自らの内面をさらけ出すことをそれほど躊躇しなくなってきた。例えば、どんな抗鬱剤を使っているのかをFacebookに書き込んだり、就業規則に違反する自分たちの行為を撮影してYouTubeに投稿したりしているのだ(実際、ドミノピザの店員が2人、こうした愚行で解雇された)。また、ティーンエージャーの中には、裸やそれに近い姿を写真に撮って携帯電話で送り合ったりしている者もいる。














