グローバル化 [ダイヤモンド・オンライン] 2013年04月10日

ニッポンのグローバル化はいつだ!? 
―世界は日本人のビジネスをこう見る【第2回】「中国で無償修理」の今、昔

 世界では、日本人の仕事ぶりが丁寧で期待以上と評価されることが多いようです。反面、なぜそこまでやるのか口に出して主張しないために、不思議な人種であると見られるケースも多いのです。こんな日本人の仕事ぶりは、今に始まったことではありません。特に、戦後の日中関係史をひも解くと、そんなエピソードにたくさん巡り会えます。

前回は、象徴的な話題として、日中の国交回復間もない頃、自社が納め、その後故障した浚渫船3隻をすべて無償で修理した三菱重工の事例を紹介しました。無償修理決断の背景にあったのは……。

現代中国の重要プラント
江南造船所の再建を支援

 このケースでは、中国側が発注時に浚渫船の使用条件を伝えなかったので、故障の責任のすべてがメーカー側にあるわけではない――。現代ならそう言っても通用するでしょう。ところが三菱重工はこの時、「故障した3隻をすべて無償で修理する」と決めたのです。

 無償修理を決断したのは、元長崎造船所長で「戦艦武蔵」の建造部長も務めた経歴を持つ古賀繁一・三菱重工元会長です。古賀会長はその後も、中国最大とはいえ、お世辞にも立派とはいえなかった江南造船所を、自ら指揮を執って再建指導し、翌年には輸出船を建造できるまでに立て直しました。その利益を度外視した、純粋な慈善心でした。

 国家が工業国として発展していく過程では、造船業が初期の中心的役割を担う段階があります。大量の鉄を使い、精緻な技術をあまり必要とせず、大量輸送やロジスティクスに貢献し、大規模な雇用にも役立つからです。そうして時代を経ると共に、国家の重点産業は、自動車やエレクトロニクスといった精緻な産業に軸を移していきます。

 日本はまさにそうでしたし、70年代の中国もそうでした。当時の国家指導者である鄧小平(Deng Xiaoping)は、自国の造船業の発展に際して、日本の数ある造船会社と中国の造船会社にそれぞれペアを組ませるという形で、日本側が指導的役割を担うよう日本に頼んだのです。

 そのペアの中でも最大級の組み合わせは、三菱重工と江南造船所のペアでした。三菱重工は、古賀繁一・三菱重工元会長の指揮の下で、社を挙げて江南造船の建て直しに尽力しました。日中合弁プロジェクトとして有名な上海宝山製鉄所などと並んで、江南造船所は今や、空母まで建造する国家の最重要プラントの一つになっています。

 ――ところが、そうした史実が、中国では消え失せてしまっているのです。


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